活動

ピストンとロータリー

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何もしてないのに、このホームページに「0x1c8c5b6a」というナゾの記事が勝手にアップされてる

しかも更新日時(管理者に表示される)を見たら「3月22日(土)18:18」

え?先週、まさに合奏してた時間!!(こわ)

「0x1c8c5b6a」という、パラレルワールドから来たバックのマウスピースみたいな謎の英数字の羅列

ヴィンセント・バックの呪い?

そしてその合奏中に突如「ゴゴゴゴ…」という轟音が天井付近から響きわたる

「ついに南海トラフ大地震が来たか!?」

と思ったらパーカッション奏者がエアコンを操作しただけだった…(キャー!)

超常現象起きまくりの防府ウィンドシンフォニー

稲川淳二もびっくり

ハッキングされてるのか??

「0x1c8c5b6a」は面白いのでそのまま残してます(勝手に消えたりして)

トランペットセクションが、次回8月のアンサンブルコンサートに向けて早くも始動

ロン・シンプソン(Ron Simpson)作曲の「4本のトランペットのためのソナチネ」を練習してます

さわやかな曲

↑は、ドイツのヴュルツブルク音楽大学のトランペットの学生4人による演奏

演奏風景は映っていませんが、ピストンのトランペットではなく明らかにロータリートランペットで演奏してるのがわかります

ピストンのトランペット(上)と、ロータリートランペット(下)
見た目はだいぶ違うけど、音は?

ロータリートランペットは独特な丸っこい音色が魅力的ですが、ピストンの楽器と比べて「音色がぜんぜん違う」という訳ではありません

音色の違いはロータリーヴァルヴだけが要因ではなくて、管の取り回しや材質、厚み、内径、形状、その他のパーツなど、いろんなことが積み重なって作り出されるので、単純ではありません

ウィーンフィルやベルリンフィルなどドイツやオーストリアの超一流オーケストラのトランペット奏者は、伝統的にどんな曲でもロータリートランペットで演奏します

その映像を見たり聴いたりして「すごい!上手い!かっこいー」と、トランペッターはみんな憧れる

「ロータリートランペットが独特で魅力的な音色」という面もありますが、奏者がめちゃめちゃ上手いのでなおさら素敵に見える(聴こえる)ということを忘れがちですが

ピストンじゃなくロータリートランペットを使うようにわざわざ指示するオーケストラの指揮者がたまにいますが、ホントにその音色を求めてると言うよりは、ウィーンフィルやベルリンフィルの演奏に憧れてる素人と同じ発想な気もする

国や地域や時代によって使われるトランペットがちょっとずつ違いますが、現在は日本を含めて多くの国でトランペットはピストンヴァルヴの楽器がほとんどです

が、ドイツやオーストリアなどの中央ヨーロッパあたりのオーケストラは、ロータリートランペットで演奏することが多い

プロ奏者じゃなくても、ドイツ周辺の地域に限っては学生でも楽器初心者でもロータリートランペットが「フツーに」使われてたりします(最近はピストン楽器の比率が増えてきてるけど)

プロオーケストラでは世界的にここ数十年「ドイツあたりの作曲家の作品はロータリートランペット」「その他の作品はピストントランペット」と、わざわざ楽器を使い分けることが多くなってきてます

実際、ブラームスやブルックナーの作品はロータリートランペットで演奏した方が「音色がしっくりくるー」と思うことはあります

逆に、と言うかフランスやロシアの作品はピストンのトランペットの方が「しっくりくるー」と、思うこともある

クラウディオ・ロディティ(1946年〜2020年)

ジャズやポピュラーミュージックではピストンのトランペットが主流ですが、ブラジル出身のジャズトランペッター、クラウディオ・ロディティはロータリートランペットでジャズを演奏してました

要するに「ロータリーじゃダメ」とか「ピストンじゃダメ」とかいう音楽はなくて、どちらもトランペットということに変わりはないのです

楽器の違いよりも、奏者による音色の違いの方がよっぽど大きいです

音楽やジャンルによって「こうあるべき」と決めつけたり、使う楽器やマウスピースまで指定するのは愚かなこと

金管楽器のヴァルヴは19世紀前半にヨーロッパで発明されました

「1814年頃にプロイセン(現在のドイツとかポーランドあたり)で、ハインリッヒ・シュテルツェル(同じ名前のバロック時代の作曲家とは別人)という人が金管楽器のヴァルヴを発明した」

というのが定説ですが、その後の変遷や推移などあまりはっきりとした記録は残ってないよう(まだまだ研究の余地がありそう)

ロータリーヴァルヴ

同時期にヨーロッパ各地で同時多発的に似たようなヴァルヴシステムが発明されたという説もあって、その頃からじわじわと広まった感じだと思います

19世紀末のフランスのクルトワ社製ピストン付きコルネット

とは言え、E.ベルリオーズが1830年に作曲した「幻想交響曲」にはトランペットとは別に「ピストンヴァルヴ付きのコルネット(cornet à pistons)」が早くも編成に加えられてます

コルネットのオブリガートが入る珍しいヴァージョンの「幻想交響曲」第2楽章
C.ドホナーニ指揮のクリーヴランド管弦楽団の演奏

やはりそれまでの「出せる音が限られる」金管楽器に比べると、ヴァルヴというものが画期的な発明だったことは明らか

↑ヴァルヴが発明される前の、ナチュラルトランペットによるオーケストラでの演奏

それから20世紀に入るくらいまでは、いろんな種類の金管楽器が出てきたり廃れたり

↑現在では使われなくなった、長いF管のトランペット

19世紀の音楽を演奏する際、当時どのような金管楽器があって作曲家はどんな楽器を想定して書いたか、把握するだけでもなかなか大変です(情報も得にくい)

ロータリー、ピストン、どちらも「指を押さえることで管の長さを変えて、違う音を出せるようにする」という点では同じですが、長所短所がそれぞれにあります

ピストンヴァルヴよりもロータリーヴァルヴの方が小さくて「軽い」のは、見ただけでもわかると思います

ピストンヴァルヴは長いのでちょっと重い

指を押さえる時のストローク(指を動かす距離、というか長さ)は、ロータリーの方が少し短くて済みます

なので指を押して音が変わる瞬間の音は、ロータリーとピストンでけっこう変わってきます

指の上下の動作量が少しで済む
やや木管楽器的?

良くも悪くも「ポっ」って感じで、音の変わり目がクリアなのがロータリー

反面、ジャズなどでハーフヴァルヴ(少しだけ押さえたり)で少しシャクったりニュアンスを出すのはやりにくい

「ピストンヴァルヴ」に比べると「ロータリーヴァルヴ」の方が、需要が少なく、製作により高い精度が要求されることもあって高額になりがちです

高級なロータリートランペットは100万円(!)を超える楽器も増えてきました

158万円、ですって

他にもロータリートランペットは楽器の構造上のレイアウト(管の巻き方)が難しかったり(マウスパイプはどうしても短くなる)、そもそも楽器が持ちにくかったり…

ちょっと持ちにくい…

ピストンでもロータリーでも、ヴァルヴを押しても戻ってこなかったりすると演奏上で致命的、というのは子供でもわかります

なので金管楽器のヴァルヴの精度は超重要、楽器の心臓部と言って良い部分です

演奏中に↑こうなったら大変

現在でも高度な技術が必要とされるので、ちゃんとしたヴァルヴ(ピストンもロータリーも)を作ることができるメーカーは世界的に見ても意外に少ない

自社で部品も作るけど、ヴァルヴに関しては他社の部品を使う金管楽器メーカーも多いです

吹奏楽では、20世紀中頃に「メロフォン」という、ホルンに似た右手でピストンヴァルヴを押す楽器が割と一般的に使われてましたが、現在ではほとんど見かけません

メロフォンはEs管(E♭管)のものとF管のものがあったようです

↑は「マーチング・メロフォン」
ベルが前を向いてて、トランペット的

日本の学校でも1960年代くらいに創部された歴史ある吹奏楽部だと、楽器倉庫を探すとホコリをかぶったメロフォンが時々出てきますので、吹奏楽部員の方は探してみてください

ピストン?のホルンを吹くデニス・ブレイン(1921年〜1957年)

「ピストン」「ロータリー」以外にも、少数派ですがいろんなヴァルヴが存在します

ホルンはロータリーヴァルヴの楽器が主流

ウィンナ・ホルン(Fシングル)

ウィーンフィルが使う「ウィンナホルン」は、「ウィンナ・ヴァルヴ」という今ではほとんど見かけないヴァルヴシステムが使われてます

トロンボーンの左手の親指で操作するF管ヴァルヴにもロータリーがよく使われますが、20世紀後半からはセイヤー・ヴァルヴ(アキシャルフロー・ヴァルヴ)やハグマン・ヴァルヴといったトロンボーン独自のヴァルヴ機構の楽器も出てきました

セイヤー・ヴァルヴ(1970年代にアメリカのエド・セイヤー(Ed Thayer)氏が発明)
アキシャル・フロー・ヴァルヴ(Axial Flow Valve)とも言われる
ハグマン・ヴァルヴ
1990年代にスイスのルネ・ハグマン(Rene Hagmann)氏が考案

2000年前後にヤマハ独自の「Vヴァルヴ」というF管システムを持ったトロンボーンが発売されました

使ってない期間がちょっとあると固着しそう…

画期的な側面もあったけど不具合やメンテナンス上の問題などあって20年くらいで無くなりました(今ではレアな珍品楽器?)

ヤマハ独自の「Vヴァルヴ」が使われたトロンボーンYSL-882V

テナー・テューバと言われる、ユーフォニアムやバリトンホルンと同じ音域のロータリーヴァルヴのB管の楽器があります

↑ドイツ式テノールホルン(B管)右手の指でヴァルヴを押す
テナー・テューバ(テノール・テューバ)という言い方は、オーケストラの中での「パート名」
ややこしい…

ドイツのオーケストラがG.マーラーの交響曲第7番を演奏する時など、時々見かけます

ドイツ式バリトンホルン(B管)これも右手の指でヴァルヴを押す

ドイツのオーケストラが、R.シュトラウスの「ドン・キホーテ」やホルストの「惑星」を演奏する時に、時々見かけます

ベルの太さやヴァルヴの数が違うのはわかるけど、ドイツ式テノールホルンとドイツ式バリトンホルン、どちらも同じB管というのは納得いかん(アルト、テナー、バリトン、とかって、金管楽器界隈では定義が曖昧)

ワーグナー・テューバ(F管とB管がある)左手の指でヴァルヴを押す

ワーグナーテューバ(ホルン奏者が吹く楽器)という、ワーグナーやブルックナー、ストラヴィンスキーの「春の祭典」「火の鳥」、R.シュトラウスの「アルプス交響曲」、バルトークの「中国の不思議な役人」などで使われる楽器も、ロータリーヴァルヴが使われてます

卵形の楽器でどれも見た目が似てて、詳しい人でも区別がつきにくい…

テューバはロータリーとピストンの楽器が半々くらいの割合?

4ピストン+1ロータリーのC管テューバ
Meinl Weston 5450 THOR

ヴァルヴ機構が発明されて200年

工作精度の向上や製作上の簡素化(コストダウン)はありますが、ヴァルヴのシステム自体は200年間変わってない、とも言えます

楽器によって、また求められる音色や演奏上の利便性、楽器製作にかけられるコストによって現在の感じに落ち着いてますが、今後21世紀の金管楽器はどうなっていくんだろう?

イタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニの代表作、1954年の「道(La Strada)」

ジュリエッタ・マシーナ(フェリーニの妻でもある)が演じる女大道芸人ジェルソミーナがトランペットを吹くシーンが出てきます

古びたロータリートランペットで吹く、ニーノ・ロータが作曲した旋律が印象的です

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