活動

トランペット奏者、あらわる

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トランペット奏者の、初めての見学者の方に来ていただけました

なんと独学でトランペットを始められたそうですが、研究熱心でトランペットでは難しい高音も今ではギュンギュンパワフルに演奏できます

学生時代に吹奏楽やオーケストラの経験がなくても、本人次第で楽器は上達できるというお手本のような方で素晴らしいです
ぜひまた来ていただけるとうれしいです

今回は楽団初のアンサンブルコンサートに向けて、各チームごとに本番での並び方などの確認作業をやってみました
演奏面も、みんな順調に仕上がってきてます

確認のための聴き手はひとりなのですが、けっこう緊張しているメンバーも
適度な緊張や刺激のある人生って、素晴らしいと思います(どうでもよくなると老化へ一直線?

アンサンブルの編成は二重奏から十三重奏まで、バラエティに富んだ大小のチームで、いろんな楽器は見ていても楽しいです

同じ楽器同士のアンサンブルもあれば、木管楽器、金管楽器、打楽器が入り乱れるアンサンブルもありますが、
「テメー!音デカすぎなんじゃー!!」などという場外乱闘は一切なく、平和に楽しく練習は進んでいきます(そらそーだーねー

曲の出だしや、音の最後の合図の出し方なども慣れてきて、ばっちりキマるようになってきました
最後に全員ななめ上目線川井郁子ドヤ顔をキメてくれると、
ボン、ボン、ボンッ、
クリティカルヒット!
です

新たなチームも結成されて、今からみんなの演奏を聴くのが楽しみです

今の時点でのMVPはテューバ二重奏で演奏する「花は咲く」チーム
歌心が感じられる演奏で、大好きなピーター・ウィスペルウェイのチェロを少し思わせるほどです

って言うとまた褒めすぎー、とか思われそうですが、歌いすぎたりヴィブラートが過剰になると一気に陳腐になり下がってしまう難しい曲を端正に演奏できてます

「そんなん書かれたらみんなの前で吹くのプレッシャーやん」
と思われるの必至ですが、プレッシャーにも打ち勝つ強靭なメンタルを身につけよ!

他のチームも頑張っていて、もっともっと良い演奏聴かせてくれそうです

P.ウィスペルウェイが弾くバッハ「無伴奏チェロ組曲」より

「独学で〜」なんて書きましたが、吹奏楽部で楽器を始めたとしても楽器奏法は奥が深くて、専門的にその楽器のことを教えてもらえる環境にあることはほとんどありません

同じ部の先輩などは少しはその楽器に詳しいですが、時には間違ったことを(悪気なく)後輩に教えてしまうこともよくあります

悪い癖が付いてしまって、頑張っているのになかなか上達できない吹奏楽部の中高生とか、見ていてかわいそうになることがあります

金管楽器は「アンブシュア(embouchure、フランス語)」が原因の場合があります

管楽器を演奏する際の、唇や口のあたりのフォーム(形)、マウスピースの唇への当て方、みたいなものをざっくりとまとめて「アンブシュア」と言います
スポーツでもフォームを改善することで劇的に成績が上がったり、逆にフォームが崩れることで超スランプに陥ったり、最悪の場合まったくダメ or 引退になることもあります

アンブシュアで特に問題が起きやすいのが、トランペットとホルンです
マウスピースが小さいからです

トロンボーン、ユーフォニアム、テューバは唇の大部分がマウスピースの中に収まるので比較的問題は起こりにくいのですが、トランペットとホルンはマウスピースのサイズ(内径16mm〜18mm、外径23mm〜28mm)が唇の厚みに近く、良いアンブシュアを獲得することが難しいのです

↑の画像はマウスピースが唇の下の方にズレてきてしまっています
このようなアンブシュアの人、身近にいた人も多いのではないでしょうか

こうなると
「高い音が続けられない」
「すぐに疲れて音が出なくなる」
「か細い音しか出ない」
「音の跳躍、スラー、タンギング、などがしにくい」
など、要するに上手く吹けなくなります

しかも一旦こうなると癖が抜けにくく、良いアンブシュアに持っていくにはかなりの!相当の!!苦労と努力と忍耐が必要になります
ゼロから楽器を始めるより難しく大変な場合がほとんどです
どんなにメンタル強い人でも逃げ出したくなります

特に「楽器を始めた初期」に、良くないアンブシュアの癖が付いてしまいがちです
一瞬「ピッ」って高い音が出るので、
「マウスピースを唇の下の方に当てた方がいいや」
とか思ってしまうのです

「Hi-B(ハイベー)出た!すごいやろ!」
とか自慢したくなりますが、一瞬「ピッ」なら、数ヶ月も楽器やれば、わりと誰でもHi-Bくらいは出ます
(トランペットの高い「ド」の音のことを、吹奏楽部ではよくハイベーと言います)

でも高い音が出るのは一瞬だけで、すぐに詰まったような感じになってまともに音が出なくなります

そして合奏では厳しい吹奏楽部顧問の先生とかに
「なんでそんな音も出ないんじゃ〜!気合と根性で高い音、デカイ音だせー!!」
とか言われて、その場しのぎで悪いアンブシュアでなんとか必死に吹いてしまって、それがどんどん癖になって定着してしまうのです

「ロングトーン」という一つの音をただ伸ばすだけの練習も、そういった悪いアンブシュアがさらに凝り固まってしまいがちで危険です

吹奏楽の世界では、昔の運動部にあった「水を飲むな」や「うさぎ跳び」と同じような、とっくに絶滅してないといけない悪しき習慣(マウスピースだけでやるバズィングやロングトーンなど)がいまだに日本全国で「やると良い練習」と信じられて蔓延しています

「全国大会金賞」みたいな学校であっても、そんな間違った練習や異常な長時間練習などがよく行われてます
管打楽器は短時間でも毎日(!)質の高い練習をすることの方が上達につながります(「青春!」とか「涙!」だと別なのかもですけど)

たまたまアンブシュアに問題がない楽器の上手な人がff(フォルティッシモ)のロングトーンとかをばんばん練習していたりすると、
「あの人はロングトーンをたくさんやってるから上手なんだ!」
とか勘違いされてしまうのです

音楽大学に行くためにプロ奏者に師事すると、
「(自分の将来のためにも)吹奏楽部は辞めなさい」
と言われることがよくあります
(ぼくは言われませんでしたし、中高6年間吹奏楽部でしたが、「辞めなさい」という人の真意も理解できます。あとホントに辞めると練習環境が無くなって、結果的に部活にいた方がよく練習できた、というパターンもあります)

自分がアンブシュアでかなり悩んできたので、他人のアンブシュアへの洞察力も持ち合わせてます

アンブシュアがまあまあ良い人には、あえてアンブシュアのことは言いません
(その人が下手に考え過ぎて、せっかくの良いアンブシュアを崩さないため)

治りそうな人には指摘してあげたくなります(アンブシュアが絶望的な人も中にはいます)

指摘して理解してもらっても、1日でアンブシュアが改善するようなことは、まずありません
最低でも2〜3週間(毎日欠かさず慎重に鏡など見ながら練習して)かかります

無意識で元の(悪い)アンブシュアに戻ろうとする傾向が誰にでもあります

経験上、こどもや女性はあまり深く考えず素直なアンブシュアで、結果的に上手に吹けている人が多いように思います
逆に男性は(機械いじりとかが好きな脳だからか)アンブシュアのことを考えすぎて、自らおかしなアンブシュアになっている人がよくいます
(引っ掛ける感じでマウスピースを唇にセットしたりとか)

上顎(うわあご)と下顎(したあご)の位置の関係や、前歯の出かた、歯並びなどもアンブシュアに大きく影響します

それらが生まれつき偶然理想的で、ほぼ苦労せず(何も考えず)素晴らしいアンブシュアがたまたま備わっている人も稀にいます
そういう人は本当に幸せです

そんな人は楽器が下手な人を見て
「なんでこんな簡単なことができないんだろう?」
とか本気で(悪気なく)思ったりします

学校の吹奏楽部から教えてほしいと頼まれる場合、
「ある程度吹けるようになってから…」
と6月、7月とかに呼ばれることが多いですが、
絶対に楽器を始めたばかりの4月に呼んでいただいた方が、生徒(1年生)のために良いです

6月でアンブシュアがもう手遅れになっていること、あります

6月からアンブシュアをなんとか良い方向にしようとしても、8月のコンクールにはまったく間に合いません
(ほとんどの場合、いったん全く音が出なくなるし)
なので悪いアンブシュアのまま、なんとか応急処置的に曲を仕上げるしか、時間的にもないのです

トランペットやホルンは、「正確なフレージング」とか「表情豊かに」とかいう音楽の表現以前の問題として、そもそも
「楽譜にある音が出ない、出せない」という、他の楽器の人からすると低レベルに見える問題がしょっちゅう発生します

トロンボーン、ユーフォニアム、テューバは、まだ絞り上げるようにしてなら、なんとかか細い音で高い音を出すことができることがありますが、トランペット、ホルンはアンブシュアに問題があると、どうあがいても出ない音は出ないのです

「もう以前のアンブシュアじゃないと音が出ません」
とか言われるパターンも非常に多いです

「アンブシュア治そうとしたら音出なくなって、もっと下手になった!あの人のせいだ!!」
とか思われたりしそうで、指摘するのにも勇気がいります
常に本番を控えていたりするので、一時的にでも音が出なくなるのは、その人にとっても部活全体にとっても大問題です

なので楽器を始めた最初の頃になるべく良いアンブシュアを身につけてないと、中高の部活生活が頑張って練習しててもずーっとみんなに白い目で見られる悪夢と化すのです

アンブシュアを上下左右の平面的に捉えている人もよくいます
歯やあごを含めた骨格は複雑で、奥行きも含めて立体的に、さらに歯や頭蓋骨や顔の筋肉などをブレスも含めて複合的に捉えないといけませんが、パッと見でその人のアンブシュアがどうなっているかは、かなり分かりにくいです
見えない部分も多いです

少しマウスピースの位置が左右にズレていたり、楽器の向きが妙に下向きだったり上向きだったりしても、その人が必ずしも悪いアンブシュアになっているとは限りません

中途半端な知識で
「もっと上にあてろ」
とか
「もっとあごを出せ」
とか
「もっと楽器を上に上げろ」
とか無責任に言って、それを信じ込んだ人の楽器人生を台無しにするのはとんでもなく不幸なことです
(素直な人ほど言われたことをウソでも信じてしまう)

ネット上にもすごく誤解を与えそうな表現や、完全に間違った情報など、たくさんあふれています
素晴らしい演奏をする楽器奏者や先生でも、生徒のアンブシュアのことにはあまり興味がなかったり、ノータッチの人もいます

「良いアンブシュア」「悪いアンブシュア」という2つだけしかないのではなく、人それぞれ千差万別で程度や良し悪しの判断も難しいのがアンブシュアです

アンブシュアがどう頑張ってもどうしようもない場合、中学や高校の1年生の1学期くらいなら、正直他の楽器に転向した方が本人にとっても部にとっても良い、ということもありえます
(ただ、慎重に。単にその人が練習がんばってなくて楽器が上手くない、という事もあるので)

もちろん楽器演奏にはブレスなどのたくさんの重要なテクニックがあって、アンブシュアはその中の一つの要素に過ぎません

ですが特にトランペットとホルンについては、アンブシュアが悪い方向に行くと、その後どんなに努力しても報われなくて、
「自分には才能がないんだ」
「○○ちゃんは軽く楽々と高い音出してるけど、自分はどうして出ないんだろう。同じくらい練習してるのに…」
「自分は楽器に向いてないんだ」
とか思ってしまうことがよくあるので、長々と書いてしまいました

アンブシュアで悩んでいるトランペットとホルンの方、
アンブシュアが原因ともわからず悪戦苦闘している方、
場合によっては劇的に上手くなれる可能性があります
諦めないで!

って後半アンブシュアのことしか書いてない〜
楽器ははじめが肝心です(特にトランペットとホルン)

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