楽団の活動とは関係ありませんが、防府市立桑山中学校吹奏楽部の第41回定期演奏会にトランペットで出演させていただきました
県外の方はおそらく半数以上が「ぼうふ市立くわやま中学校」と読んでしまうと思いますが、「ほうふ市立くわのやま中学校」と読みます
吹奏楽コンクール全国大会に過去15回出場、その内金賞8回という山口県では圧倒的な吹奏楽の名門校です
日本全国で見ても全国大会15回出場は歴代13位、金賞8回は歴代11位という偉業と言っても良い成績を収めてます(吹奏楽コンクールは1940年に始まって、2024年で72回目になります)
そんなこと言われてもピンと来ない方もいらっしゃるかもしれませんが、高校野球(甲子園)は全国からだいたい49校が出場できるのに対して吹奏楽コンクール全国大会には日本中から30校くらいしか出場できません
金賞はだいたい上位8校くらいなので、甲子園のベスト8と同じくらい?
もし地元の野球部が甲子園ベスト8に入ったら、今でも大騒ぎですよね
「野球と吹奏楽を比べてもどうなん?」という意見はごもっともですが、桑山中吹奏楽部はプロ奏者も多数輩出していて、音楽界への貢献度も素晴らしいものがあります
「ファイナルコンサート」とあるのは中学校の部活動が「地域移行」になるのに伴って、桑山中学吹奏楽部という名目での活動は2024年度が最後になるからです
2025年度からは近隣の華西中学校、華陽中学校(今年の全国大会出場!)と3校合同の「桑の華ウィンドアンサンブル」として生まれ変わるので、桑山中学校吹奏楽部の伝統が無くなる訳ではありません
ぼくが出演したのはコンサート第3部の卒業生を中心としたステージ
プログラムに曲名は載ってませんが、
J.S.バッハのカンタータ第140番「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」
D.ショスタコーヴィチの「祝典序曲」
J.S.バッハのカンタータ第147番「主よ人の望みの喜びよ」
指揮をするのは桑山中吹奏楽部で1992年〜1999年に顧問だった竹中俊二先生です
ぼくは桑山中学校の卒業生ではありませんが、下関市の玄洋中学校吹奏楽部で3年間竹中先生にお世話になったご縁で出演することになりました
竹中先生はぼくが玄洋中を卒業した年に山口市立小郡中学校に転任されて、それまで県大会止まりだった小郡中をいきなり中国大会金賞に(つまり赴任してたった5ヶ月くらいで)導いて周囲をあっと言わせました
玄洋中で全国大会に3回、桑山中で全国大会7回、防府吹奏楽団で1回、全国大会で指揮をされてます
中学校部門の全国大会で10回以上指揮をした人は、1940年に始まった全日本吹奏楽コンクール72回の歴史上、24人しかいません(わしゃブラバンヲタクか)
吹奏楽コンクールは、特に中学校部門では「指導者コンクールだ」と揶揄されることもあるくらい、指導者の力量でかなり成績の差が出ることが多いです
楽器初心者や楽譜がまったく読めないような生徒が、短期間で人を感動させるくらいの演奏ができるようになるなんて不可能としか思えませんが、それをやる訳です
いろんな種類の楽器があってそれぞれ専門性も高いので、それら全体を高レベルに引き上げるのは魔法のようなものです(しかも思春期まっただ中の不安定な世代を)
ただ音楽に精通してるだけではなくて、人の心を掴む、その気にさせることができる人間性全部みたいなものを問われるのが中学校の吹奏楽部顧問なのだと思います
ぼくがこの演奏会に出ることになったいきさつは…
(本番2週間前)
ふと携帯を見ると、竹中先生から数年ぶりに着信履歴が…
(ヤバい、オール巨人師匠の件がバレたか?)
慌ててかけ直す
西山「ご、ご無沙汰してます!先生お元気ですか?」
竹中先生「おー、2ヶ月入院しとってのー、元気じゃないわ」
西山「そうなんですか!2ヶ月って大変でしたね」
(〜いろいろよもやま話〜)
竹中先生「11月4日に桑山中の定演でOBバンドをなんとか指揮するんやけど、出んか?」
西山「あ、(ぼく、桑山中卒業生じゃないですけど)そうなんですか」
という流れ
本番2日前の練習に参加すると、登場した竹中先生は車椅子!
でも悲壮感はなく、お話しすると元気そのもの(歩いてないと足の筋肉ってすぐに落ちるのでしょう)
桑山中を卒業したばかりの防府西高校、防府高校の吹奏楽部員から桑山中卒業生のプロ奏者まで入ってて、全体に演奏レベルが高い!
竹中先生が指揮すると全体が日本刀のように研ぎ澄まされた響きになりますが、決して単色系ではなく色彩感も併せ持つサウンドを醸し出します(実際フランスやロシアのオーケストラ曲をよく選曲されてました)
今回はそれにちょっとやんわりした温かみのようなものも加わっていて(テンポもゆったり気味)、年齢とともに変化するんやなーと感じました
コンクールの成績ばかりがクローズアップされがちですが、レパートリーの点でも竹中先生は先進的
今では定番曲になってるA.ハチャトリアンの「ガイーヌ」やM.d.ファリャの「三角帽子」など当時はほとんど演奏されてなかった曲を、まだ吹奏楽の楽譜が少なかったり出版すらされてなかった1970年代から取り上げてました
ぼくが玄洋中学の吹奏楽部に入部した時、先輩たちがコンクール自由曲として練習してたのはC.ドビュッシーの「イマージュ(管弦楽のための映像)」
情景描写や雰囲気など、まさに印象派の名にふさわしい官能的なフランス音楽(とても中学生が演奏するような曲じゃない)
ちょっと前まで松田聖子くらいしか知らない田舎(彦島)の小学生だったぼくは「なんだこの音楽は!?」と衝撃を受けました
吹奏楽コンクールのレパートリーはだんだんとオーケストラ曲の編曲ものより吹奏楽のために書かれたいわゆる「オリジナル作品」が中心になってきましたが、現在の感覚で捉えてもドビュッシーの「イマージュ」や「夜想曲」をコンクールでやるなんて、斬新です(しかもそれらの曲で全国大会に導くなんて。「夜想曲 〜祭り」静かに終わる曲だし)
話が脱線
卒業生によるスーパー吹奏楽団ですが、他人の音を聴いてなかったり要所で指揮を見てないと「なに下見とるんかー!!」と怒鳴り声
竹中節は健在で、車椅子の指揮者とは思えないっすよ先生
学校の体育館での練習でしたが、リハーサルの流れはスムーズ
全体を取りまとめるNさんの裁量と、出演者兼関係者の協力的な連携も見事
練習後、ティンパニやマリンバといった大型打楽器を運ぶのも、あっという間に終了(音楽室ってどの学校でもだいたい最上階の端っこだから大変)
そして本番当日午前中
防府市公会堂ステージで40分間だけリハーサル(メインはもちろん桑山中学の現役吹奏楽部員なので)
竹中先生は時間を気にしてないのか同じ箇所を反復練習してて、だんだん「(3曲やれる?)」というムードがみなさんからひしひしと伝わってくる
シビレを切らしたNさんが
「先生、あと1分です」
その後、大楽屋にてさらに最終リハーサル
そして本番
素晴らしい演奏でした
なんとも言えないテンポ感と雰囲気は、経験の浅い指揮者には出せないです
音楽性って人間性やなー、とつくづく思ったり
その後、客席で現役部員を中心としたポップスステージ見てたら、1年生の時からレッスンに来てるNちゃんがトランペットに司会にダンスに大活躍でビックリ!
(いつも「こんちわぁー」って眠そうにレッスンに来るのに)
小学校の時は楽器やってなかった組なのに、楽器初心者から3年間よくがんばった!
ドラミちゃん最高
防府に引っ越してきて5年くらい、いまだ知り合いが少ない中で防府ウィンドシンフォニーやってますが、防府や防府出身の素晴らしい奏者さんたちと少しお話できたこともあって良い経験になりました
2024年11月10日(日)には桑山中学校の卒業生もたくさん所属されてる防府吹奏楽団の第21回定期演奏会があります
そちらにもぜひ足を運んでみてください
アスピラート(防府市地域交流センター)3階の音楽ホールで、14:00開演です
竹中先生、回復には時間がかかるかもしれませんが、まだまだがんばって指揮してください!
そして桑山中の吹奏楽部員さん、防府市の吹奏楽の層の厚さはなかなかない環境
上手くなるのに大事なのは毎日の練習と周りの環境
よその人がうらやましがるほど恵まれた環境の中で、これからも上達することを楽しんでください
防府ウィンドシンフォニーにも来てね!