大盛況に終わった第4回アンサンブル・コンサートから1週間
休む間もなく次のステップに向けての練習です

新曲の「ジャンボリミッキー!」の楽譜を配布
2019年から東京ディズニーランドでキッズ向けダンスとしてやってたのがなんだかジワジワ人気が出てきて、とどまるどころか大人たちも「踊らせろ」とさらに盛り上がってるようです
オリジナルの調性はG-dur→A-dur(G major→A Major)ですが、吹奏楽版は半音高いAs-dur→B-dur(A♭ Major→B♭ Major)になってます
何かの曲が吹奏楽版になる時に、このように半音高くしたり半音低くしたりと「移調」されることがよくあります
理由は「演奏しやすくする」ためです

例えばクラリネットやトランペットなど吹奏楽では多数勢のB管(べーかん)の楽器で実音の「A-dur(アードゥア)」を演奏すると、♯(シャープ)が5個も付いてて演奏しにくいです
それが半音高い「B-dur(ベードゥア)」だと♯(シャープ)も♭(フラット)も付かなくて(←0個)演奏しやすい←つまり簡単、になるのです

よっぽど速くて指が大変な曲でもない限り、♯(シャープ)5個くらいならある程度スキルのある人だったら問題なく演奏できます
でも吹奏楽は楽器を始めて間もない中高生が主に演奏するので、その辺を配慮して♯(シャープ)や♭(フラット)がなるべく少ないKeyに移調して編曲されることが多いのです

たった「半音」の違いですが、聴いてみると曲によっては違和感を覚えることもあります
絶対音感は持ってない人の方がはるかに多いですが、絶対音感なんか持ってなくても「調性(Key)」というのはそれぞれの調に「色」や「雰囲気」を感じる人も多いです(子供でも感じます
例えばよく聴く「A-dur」の曲を「B-dur」で聴いた時に、「なんか違うな〜?」と思うことがあるのです(それ正常です

ちなみに管楽器はどちらかと言うと♭(フラット)系の曲の方が演奏しやすいのですが、ヴァイオリンなどの弦楽器は♯(シャープ)系のKey(調性)の曲の方が演奏しやすいようです
弦楽器奏者が♭(フラット)がたくさん付く曲を「音が立たないからイヤだ」とか言うことがあります

管楽器は、演奏する人ならわかると思いますが♯(シャープ)が多い曲の方が逆にイヤだと思います
例えばパラパラと速いパッセージが出てくる曲で「♭(フラット)3つ」の曲と「♯(シャープ)3つ」の曲なら、ほとんどの場合♭(フラット)3つの曲の方が圧倒的に演奏しやすいです(管楽器の場合

運指の面でもそうですし、運指以外でも、例えばゆっくりのフレーズでも♯(シャープ)系の曲は管楽器だとちょっと演奏しにくかったりします
そんな訳で吹奏楽の曲はB-dur、Es-dur、As-dur、F-durあたりの「♭(フラット)系」のKey(調性)の曲がすごく多いです

実音B(ベー)でチューニング(だいたい合ってない)して、♭(フラット)系の曲が始まると、
「あー、吹奏楽やな〜」と思います(それでも吹奏楽が好きですけど
中学高校で吹奏楽をやった人が、大学生になって大学のオーケストラに所属することがよくありますが、
「オーケストラって、♯(シャープ)が付く曲多いな」と思うかもしれません

それは「吹奏楽が♭(フラット)系の曲が多い」と言った方が正しいのかも
オーケストラではクラリネットのA管やトランペットのC管をよく使うのは、そういった「調性」による演奏しやすさ(演奏しにくさ)も影響してます

吹奏楽とは親和性の高いロシアのオーケストラ作品、チャイコフスキー、リムスキー=コルサコフ、ボロディンなどの曲では、A-durの箇所がよく出てきます
ショスタコーヴィチの「祝典序曲」も、オリジナルKeyはA-durです
(Tpセクションは全員Monette社のC管で演奏してます)
それらの曲は吹奏楽でやる時、ほとんどの場合で半音低く(か、高く)楽譜が移調されてます

管楽器が活躍する曲なので吹奏楽でやるのには向いてるのですが、Key(調性)に関して言えば吹奏楽版は聴いた感じちょっと違和感が拭えません

でも、例えばボロディンの「ダッタン人の踊り」をもしオリジナルKey(調性)で吹奏楽で演奏した場合、後半のA-durの速いスケール(音階)をクラリネット奏者は♯(シャープ)5つで延々やらされて「指が痙攣するわ!」と文句が出そうです
生で見たらさぞかし感動的
A管のクラリネットがあれば難易度は一気に下がる(♯(シャープ)5個→0個)のですが、クラリネット全員がA管を持ってたり、または用意することは、吹奏楽ではなかなかありません

スケール(音階)の練習はどの楽器にとっても重要ですが、コンクール全国大会!を目指しているような学校の吹奏楽部の人でも全部のKey(調性)の音階が上手く演奏できない人がたくさんいます
全部と言っても長音階は12種類しかないので毎日練習していればそんなに難しくはないのですが、♭(フラット)や♯(シャープ)が4つとか5つ付くとゆっくりのテンポでも間違えたり、上手に演奏できない場合がほとんどです

その割に「倍音がどうのこうの」とか「純正律(純正調)だ!」とか、すごく高度なことを生徒は強要されていて、なんだかチグハグだなーと思うことがよくあります(ほとんどはどこかの吹奏楽強豪校の真似(←悪しき伝統)と、1984年にヤマハから発売された「ハーモニーディレクター」という純正律の音程が簡単に弾けるキーボードの悪影響です)

それもいいんですがフツーに12種類の長音階を日々地道に練習した方が、その人にとっても全体にとっても、演奏のレベルが上がる近道になると思います
楽典の理解だけではなくて、音階の練習によって演奏の質も向上するのです

真夏の超高温の部屋でチューニングに異常なほど長時間費やす割に、音階練習など基本的な練習は軽視されがちな吹奏楽部
「トッププロ奏者ほど(!)毎日音階の練習するんですよー」と言っても聞いてくれんのやろーなー(ミスも減るのに
勘の良い素直な方、今日から長音階12種類だけでいいので「全調スケール」毎日練習しましょう(10分もかかりません

数ヶ月後には「そういうことか!」と、短時間で曲が上手に演奏できる(効率が良い)ことに気づくと思います
「ジャンボリミッキー!」から「Key(調性)」「音階練習」の話に、脱線がスゴい
